
前回の記事で、
「人によって、起動する順序が違う」
という話を書きました。
今回はその続きというか、
例題じゃないですけど、サッカー・フットサルを題材に考えてみたいと思います。
さて、
私は平日の昼間に開催されている「個サル」を担当しています。
個サルとは、
その日に集まった人たちでチームを作り、
ゲームを楽しむ個人参加型のフットサルです。
基本的に、毎回メンバーが違います。
そんな個サルを長く見ていると、
最近ちょっと面白いことが起きています。
最初はエンジョイカテゴリーで開催していて、
その時は、
「個人技のある人=上手い人」
になり、
実際、上手い人がいるチームが勝っていました。
ところが最近、それだけでは勝てなくなってきました。
っというのも、平日昼間なので
ある程度見知った顔ぶれになってきます。
すると、必然みんな上手になってきます。
そのタイミングでエンジョイカテゴリーから経験者のみ、に
敷居が少し高くなりました。
簡単に言うと全体的にレベルが高くなったのです。
そうなるとどうなるか?
上手い人と同じチームになった。
なのに勝てない。
逆に、
ものすごく上手い人がいるわけでもないチームが、
なぜか強い。
なぜだ?
今回はそんな話です。
「上手い人がいる=勝てる」が成り立たない
個サルは遊びです。
遊びなんですが、ゲームをする以上、やっぱり勝ったら嬉しい。
勝つためには点を取らなければならない。
点を取るためには上手い人がいた方がいい。
非常に分かりやすいロジックです。
ところが今は、
「上手い人と同じチームになれれば勝てる」
が必ずしも成り立ちません。
では、強いチームとは何が違うのか?
ゴールへの意識が高い。
攻守の切り替えが早い。
味方同士が助け合っている。
ゴールキーパーが積極的にゲームへ関わっている……
挙げればキリがありません。
つまり個人参加でありながら、
「個人の力」だけではなく、
「チームとしての力」が求められるようになってきた
ということです。
では、
その「チームとしての力」とは何なのでしょう。
サッカーって、そもそも何をするスポーツ?
ここで、サッカーの原則から考えてみます。
JFA指導者ライセンスで徹底的に教えられる
基本であり、全てであるという概念です。
っといっても難しい話ではありません。
むしろ、
「そんなの当たり前やん」
という話です(笑)
でも、この「当たり前」が意外とできません。
ではサッカーの3原則というのを見てきましょう。
① ゴールを奪う
サッカーは、相手より多く点を取れば勝つスポーツです。
だから一番の目的は、
ゴールを奪うこと。
すごく当たり前です(笑)
たとえば相手のゴールが空いている。
自分のところにボールがある。
届く距離なら、シュートを打てばいい。
わざわざパスを10本つなぐ必要はありません。
ところが意外と、
そもそもゴールを見ていない。
パスすること。
ドリブルすること。
ボールを持つこと。
それらが先に起動してしまう。
でも、本来一番最初に考える、見なければならないのは
「ゴールを奪えるか?」
なのです。
② 前進する
とはいえ、
毎回そんな簡単にシュートは入りません。
ゴールにはゴールキーパーがいます。
遠くからシュートを打つより、近くから打った方が入る確率は高くなる。
だったら、
ゴールへ近づこう。
ここで初めて「前進する」という行為が生まれます。
ドリブルする。
前方の味方へパスする。
スペースへ走る。
これらは全部、
ゴールを奪いやすくするために前進している
わけです。
③ ボールを保持する
ところが相手も当然、前進させてはくれません。
ゴールキーパー以外にも、ゴールを守る選手がいます。
簡単にゴールへ近づけさせないよう邪魔をしてきます。
すると、
無理に前へ進めばボールを奪われる。
ボールを奪われたら、攻撃そのものが終わってしまう。
だから、
ボールを失わないようにする。
一度後ろへ戻す。
横へ動かす。
ボールをキープする。
つまり
「保持する」という選択が生まれます。
順番にすると、ものすごくシンプル
ここまでを整理すると、
① ゴールを奪う
② 前進する
③ ボールを保持する
となります。
そして大切なのは、この3つがバラバラではないことです。
①のために、②をする。
①のために、③をする。
そして
②を可能にするため、③がある。
つまり、
ゴールを奪うために前進し、
前進するために必要なら保持する。
これを
「優先順位」と呼んでもいい。
「目的と手段」と呼んでもいい。
そして前回の記事の言葉を使うなら、
「何から起動するのか?」
という話でもあります。
手段が先に起動すると、おかしなことが起きる
ところがゲームを見ていると、この順番が入れ替わることがあります。
ゴールを狙えるのにパスをする。
前進できるのに横へ運ぶ。
シュートできるのにドリブルを続ける…など
ボールを失わないことが目的になってしまう。
もちろん状況によって、それらが正解になることもあります。
問題なのは、
「なぜ、それをするのか?」
が抜けてしまうことです。
パスが上手い。
ドリブルが上手い。
ボールを扱う技術が高い。
でも、
その技術がゴールという目的につながっていない。
そうなると、
技術は高いのに、なぜかチームが強くならない
という不思議なことが起きます。
個人技がいらなくなったわけではありません。
むしろ個人技はある方がいい。
ただ、
「何のために、その技術を使うのか?」
が先にある。
技術は目的ではなく、
目的へ向かうための手段なのです。
守備になると、全部ひっくり返る
面白いのは守備です。
攻撃側の考え方を反対から見るだけで、守備になります。
攻撃側が、
① ゴールを奪う
② 前進する
③ 保持する
なら、守備側は、
① ゴールを守る
② 前進させない
③ 保持させない
となります。
非常にシンプルです。
攻撃側がゴールへ近づきたいなら、守備側は近づかせない。
攻撃側がボールを保持したいなら、守備側は自由に保持させない。
つまり攻撃と守備は、別々のものではありません。
同じ出来事を反対側から見ているだけ。
だから本来、
攻撃を理解することは守備を理解することにつながるし、
守備を理解することは攻撃を理解することにつながります。
ところが、
「攻撃は上手いけど、守備になると何をしたらいいか分からない」
という人は意外といます。
技術だけを見れば、
それも当然なのかもしれません。
でも原則から考えると、少し不思議です。
相手が何をしたいのかが分かれば、
自分が何をさせなければいいのかも分かるからです。
「チームとして強い」とは何なのか?
ここで最初の話に戻ります。
個人技のある人がいるのに勝てない。
反対に、飛び抜けた選手はいないのに強いチームがある。
その違いは何なのか?
一言でいうと、
ポジショニング
だと私は思っています。
ポジショニングとは、ものすごく簡単に言えば、
「今、どこにいるべきか」です。
ゴールを狙える場所にいるか?
前進できる場所にいるか?
味方がボールを失わないよう助けられる場所にいるか?
守備なら、
ゴールを守れる場所にいるか?
相手を前進させない場所にいるか?
相手が自由にボールを持てない場所にいるか?
技術がどれだけ高くても、
その力を使える場所にいなければ、宝の持ち腐れになります。
逆に、ものすごい個人技がなくても、
必要なときに必要な場所にいる人が何人もいるチームは強い。
個人の能力だけではなく、
「自分の能力を、チームの中のどこに置くか?」
まで含めてサッカーなんだと思います。
ゴールキーパーも同じ
これはゴールキーパーにも当てはまります。
ゴールキーパーというと、
「ゴール前に立ってシュートを止める人」
と思われがちです。
もちろん、それは大事な仕事です。
でも、ゴールキーパーもチームの一人です。
味方が前進できるように関わる。
ボールを保持できるようにパスコースを作る。
守備ではゴールを守りながら、
視線で牽制をかけて、相手を前進させにくくする。
つまりゴールキーパーも、
ゴールを守るだけではなく、攻撃と守備の原則の中にいる。
実際、
こういう関わり方のできるゴールキーパーがいるチームは、
個サルでも総じて強いと感じます。
でも、個サルって遊びでしょ?
ここまで書くと、
「いやいや、個サルなんて遊びやん」
と思う人もいるでしょう。
全くその通りです(笑)
リーグ戦でもない。
毎回違う人が集まった寄せ集めのチームです。
お金を払って参加しているんだから、好きにプレーさせてほしい。
これも間違っていません。
むしろ正解かもしれません。
ただ、面白いのはここからです。
遊びでもゲームをすれば、勝ち負けは発生します。
勝敗にこだわらない人でも、ゴールが決まればだいたい嬉しい。
失点すれば、多少なりとも悔しい。
そして長く個サルを見ていると、
強いチームは、総じて雰囲気がいい。
声が出る。
助け合う。
ナイスプレーを喜ぶ。
守備もする。
ゴールキーパーも参加する。
一人だけが頑張っているのではなく、全員がゲームの中にいる。
すると相手チームも、
「あそこ強いな」で終わらない。
なんとか勝とうとする。
守備を頑張る。
走る。
声を出す。
工夫する。
するとゲーム全体が面白くなる。
だから楽しい。
だから運動にもなる。
そして結果的に、
サッカーというゲームの本質から離れない。
「遊びだから適当でいい」と、
「遊びだからこそ本気で遊ぶ」は、
似ているようで、ずいぶん違うのかもしれません。
これ、サッカーだけの話なんだろうか?
ここまで書いていて思うのですが、
たぶんこれは、サッカーだけの話ではありません。
仕事でも人生でも、
「何をするか」ばかり考えていると、
手段が目的になってしまうことがあります。
夢がある。
目標がある。
やってみたいことがある。
なら、まずゴールを狙ってみる。
チャンスがあるなら、シュートを打つ。
まだ届かないなら、一歩前進する。
必要なことを学ぶ。
情報を集める。
人に会う。
もちろん、いつでも前進できるわけではありません。
壁にぶつかることもある。
批判されることもある。
疲れることもある。
そんなときは、一度ボールを保持するように、
立ち止まってもいい。
守ってもいい。
休んでもいい。
ただし、
保持すること、そのものが目的ではない。
また前へ進むために保持する。
そして前へ進むのは、ゴールへ向かうためです。
大きな目標でも、小さな目標でも。
仕事でも、遊びでも。
案外やることは同じなのかもしれません。
ゴールを見る。
行けるなら行く。
無理なら前進する。
それも無理なら、一度失わないようにする。
そして、またゴールを見る。
たったそれだけです。
個サルは遊びです。
だからこそ、
本気で遊べばいい。
その方がたぶん、楽しいから。




